アイツの溺愛には敵わない
1*アイツと同居だなんて!

身だしなみ、よし。


忘れもの、なし。


最終チェックを済ませて自分の部屋を出る。


「行ってきまーす」


「ちょっと待って、映結!」


玄関のドアを開けようとしたところで、キッチンからお母さんの焦った声が聞こえてきた。


「お弁当、忘れてるわよ~」


「えっ…!?」


確か、さっき中に入れたはず。


慌ててスクールバッグを開けて確認してみたけれど、お弁当はちゃんと入っていた。


「あるよ、お弁当」


「違うわよ、映結の分じゃなくて…」


キッチンから足早に私のところにやって来たお母さん。


目の前に黒色のお弁当入れを差し出した。


「これ、颯己くんの分」


「あ……」


アイツのお弁当か…。


「いつもコンビニのおにぎりやパンばかりだと栄養が偏っちゃうから」


「うん……」


「このあと、颯己くんに“おはよう”って声をかけてから学校に行くんでしょ?その時にお弁当も渡してあげて?」


声をかけるっていうより、叩き起こすんだけどね…。


“はーい”と素っ気ない返事でお弁当を受け取った私は外に出た。


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