アイツの溺愛には敵わない
「俺の隣、琴宮さんだ~!」
隣の席にやって来たのは、高塚 双葉(たかつか ふたば)くん。
クラスのムードメーカー的な存在で人懐っこい印象。
中性的な顔立ちで、カッコいいというよりも可愛いっていう言葉が似合う感じだ。
「実は琴宮さんとガッツリ話してみたかったんだよね。今まで殆ど喋ったことなかったから」
高塚くんのみならず、基本的に男子とはあまり会話していないからな、私。
男子が苦手っていうわけじゃないけど、特に話したいとも思わないし。
でも、高塚くんは話しやすそう。
「よろしくね~」
「こちらこそ、よろしくね」
和やかな空気で挨拶を交わしていると、後ろからガタンッという物音が聞こえた。
「へぇ…。前の席、琴宮サンじゃん」
わざとらしいぐらい棒読みな名前の呼び方。
聞き慣れた声。
振り向くと、頬杖をつきながらこちらを見ている颯己がいた。
「よろしくね」
目が合った途端に少しだけ口角を上げて笑う颯己。
咄嗟に視線を逸らした私は、無言で前に向き直った。