アイツの溺愛には敵わない
驚いて固まっていると、こちらに歩いて来る颯己と目が合う。
不機嫌そうな眼差しを向けられて、私は直ぐに視線を逸らした。
颯己を起こさなかったからって、どうして私が気まずさを感じなくちゃいけないの?
そもそも自分でちゃんと起きろって話だし!
心の中で力強く頷いていると、颯己は無言で自分の席へ。
スクバを机に押しつけるように置くと、ガタンと大きな音をたててイスに座った。
いつにも増して機嫌悪そう。
私なんかより、お母さんの方がよっぽど優しく起こしてくれたはずなんだけど…。
まあ、いいや。
単に起きた時から虫の居所が悪いのかもしれないし、気にしないでおこう。
そう思いながら高塚くんのスマホ画面に視線を戻した時。
「琴宮サン、それ…何見てんの?」
低くて棒読みのような声。
ゆっくりと顔を向けると、颯己が眉をひそめながら高塚くんのスマホを指差していた。