アイツの溺愛には敵わない
「ま、真浦くんが興味あるようなものじゃないと思うよ」
「俺にも見せて」
優しくねだるような言い方というよりは、“見せろ”と言わんばかりの命令的な感じ。
今まで見たことがないピリピリとした空気に困惑していると、高塚くんが颯己の方にスマホを向けた。
「俺の家の近所にチョコレートが美味しい洋菓子店があるから、琴宮さんに場所を教えてたんだよ。ほら、このお店!」
「チョコレート、ふーん……」
「もしかして、真浦ってチョコが好き?」
「嫌い。そもそも甘いもの全般ムリ」
「そっか。苦手なのか~」
フムフムと頷いている高塚くんの横で、私はポカンと口を開けてしまった。
何で嘘ついたの…?
クッキー大好きだし、他のスイーツだっていつも美味しく食べてるじゃん。
意味が分からず疑問符を浮かべていると、颯己はため息をつきながら立ち上がる。
突然どうしたのかと身構える私に視線を向けることなく、黙って教室を出て行ってしまった。