アイツの溺愛には敵わない
「なんか、俺…気に障るようなこと言っちゃったかな…?」
「高塚くんは何も悪くないと思うよ」
単にアイツの機嫌が悪いだけ。
誰が話し掛けても同じ反応をとったに違いない。
なんなのよ、まったく。
ここまで不機嫌なのは初めてじゃない?
何に怒ってるのかも分からないし、私の方がため息つきたいぐらいだよ。
そのあと。
朝礼が始まる数分前に、教室に戻ってきた颯己。
もしかしたら、あのまま授業を一日サボるんじゃないかと思っていたけど、杞憂に終わった。
チラリと顔を見たら、ピリピリした雰囲気がなくなって、いつもの颯己に戻っている感じ。
だから、機嫌は治ったのかな…。
そう思ったけれど。
「………」
授業中、後ろから背中を突き刺すような視線を常に感じる事態に。
振り向いて怒るわけにもいかず、気にしないようにと心に言い聞かせたけど、時間が経つにつれて気になる一方で。
結局、授業に殆ど集中できないまま一日が終わってしまった。