アイツの溺愛には敵わない
「はぁ……」
背後からの視線攻撃のせいで、なんだか妙な疲れが…。
早く帰って部屋でゆっくりしたいのに、こんな日に限って日直だなんて。
日誌を開いた私は、シャーペンを持ったまま固まった。
困ったな。
颯己の視線ばかり気にしていたせいか、今日一日の出来事が殆ど印象に残っていない。
簡潔すぎると先生から返却されるみたいだから、しっかり書かないといけないのに。
とりあえず、朝から順を追って振り返ってみるか。
記憶を辿りなおすことで、何か日誌に書くことが出てくるかもしれないし。
「琴宮さん、難しい顔してるけど…どうしたの?」
その声に顔を上げると、高塚くんが不思議そうな表情で覗き込んでいた。
さっきまで、窓際で友達とお喋りしていたけど、席に戻ってきてたのか。
「ううん、何でもないよ。高塚くんは、これから部活?」
「今日は休みだから、もう帰るよ」
「そっか。じゃあね」
「うん、また来週」
高塚くんは、机の上に置かれたスクバを肩に掛けようとしたけれど、すぐに中断してしまった。
「琴宮さんって嘘が下手だね」
「えっ…?」
「日誌、書くの苦戦してるんでしょ?俺で良ければ手伝うよ」