アイツの溺愛には敵わない
“嘘が下手”って、前に颯己からも言われたことがあったな。
日誌とにらめっこしてるこの状況で、何でもないって誤魔化すのは無理があったか。
「ありがとう。でも、自分で頑張るから高塚くんは先に……」
「それだと琴宮さんの帰りがかなり遅くなっちゃうでしょ?」
「そ、それは……」
自信を持って否定が出来ない。
記憶を辿っても、日誌を書く手が進むかどうかは微妙だし。
言葉に詰まっていると、高塚くんはニコリと笑った。
「困った時はお互い様。日誌、さっさと終わらせて帰ろうよ」
せっかく気遣ってもらっているのに、頑なに断るのは逆に失礼な気がする。
ここは素直に頼ろうかな…。
「それじゃあ、お…お願いします」
「うん!えっと、どこに苦戦してるの?」
「実は……」
ずっと考え事をしていたため、今日の授業内容や出来事が浮かばずに日誌が書けない旨を説明。
高塚くんはフムフムと頷くと、自分のノートを1ページ破って、印象に残ったことを朝から順番に箇条書きしてくれた。
それを参考にしたおかげで、日誌を書く作業は順調に進み、思っていたよりも早く終わらせることが出来た。