アイツの溺愛には敵わない
隣の席と前の席。
そして通路を挟んだ反対側の席。
颯己の姿が見当たらなかったから完全に油断してた。
まさか、後ろの席にくるなんて…。
さっきまでの席に戻りたい。
「あれ?真浦が女子に話しかけんの珍しいじゃん。琴宮さんと仲良いの?」
「んー、まあ……」
「別に仲が良いわけじゃないよ!真浦くんとは同じ中学でクラスが一緒だったっていうだけ!」
慌てて颯己の言葉を遮って、高塚くんに説明する。
高塚くんと、周囲の女の子たちからは“そういうことか~”と納得の声がこぼれた。
変な汗かいちゃったよ…。
曖昧な答え方は誤解を生むんだから気を付けてよね…。
心の中で訴えながら睨んだけれど、颯己は無表情で窓の方をボーッと眺めていた。