アイツの溺愛には敵わない
「高塚くん、本当にありがとう」
「昨日は俺もお世話になったから、役に立てて良かった」
「じゃあ、私は職員室に寄って、日誌を提出してから帰るね。だから高塚くんは…」
「帰る方向も同じだし、駅まで一緒に帰ろ?」
突然の高塚くんの提案に、私は慌てて首を横に振った。
「さ、先に帰っていいよ?先生、日誌の内容をチェックするだろうから、少し時間がかかると思うし」
「待ってるから大丈夫」
「でも、そこまで付き合ってもらうのは申し訳ないから」
私のせいで帰りが遅くなってしまったわけだし、出来るだけ早く帰ってもらいたい。
日誌を手に持って立ち上がると、高塚くんは少し驚いた表情を浮かべた。
「もしかして、琴宮さん…終礼の時の先生の話、聞いてなかった?」
そう言えば、真剣な顔で何か喋っていたような…。
でも、颯己の視線攻撃から早く解放されたくて、そのことばかり考えていたから、話が耳に入ってこなかったんだよね。