アイツの溺愛には敵わない

「なんで、あんなことしたの?」


「“あんなこと”って?」


私に背を向けたまま、颯己の素っ気ない声が飛んでくる。


「高塚くんの前で私のこと名前で呼んだでしょ」


「あ…、そっちか」


「それだけじゃない。帰り道で同じ高校の女の子たちに、私たちが手を繋いで歩く姿を目撃されちゃったんだよ?」


普段、私が帰っている時間帯よりも遅かったから、幸い数人に見られた程度だったけど。


颯己は女の子たちからの人気が高い。


情報なんて、あっという間に拡散されてしまう。


「別にいいじゃん、見られたって。何も不都合なこと無いでしょ」


「ダメだよ。私たちが幼なじみで、家も隣同士だってことがバレたら大騒ぎになる」


「………」


「私、高校生活は穏やかに送りたいから。そのためにも、なるべく颯己とは関わりたくないの!」


我ながら酷い言い方。


きっと、今の言葉で私への嫌悪感が強くなったに違いない。


でも、それでいい。


だって、これが最適解なんだから。


颯己にとっても、私にとっても。


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