アイツの溺愛には敵わない
私と颯己が幼なじみであること、同じマンションに住んでいて部屋が隣だということは秘密にしている。
だから、学校では他人のフリ。
必要最低限の会話しかしないし、お互いのことも名字で呼び合っている。
これは全部、私個人の頼みごと。
一応、颯己は頼みを聞き入れて他人を演じてくれているけれど、渋々やってるっていう感じだ。
“別に周りに知られたっていいじゃん”
この半年、同じセリフを何度耳にしたことか。
颯己にとって私は、幼なじみというよりも家族みたいな感覚なんだろう。
私だって、颯己は世話が焼ける弟みたいな存在だ。
だけど、周りはそんな風には見てくれない。
それを中学の時に思い知ったから。
高校では幼なじみであることをシッカリと隠して、颯己とも距離を置くんだ。