アイツの溺愛には敵わない
「映結、起きてる?」
颯己かと思って心臓が跳ねたけど、ドア越しに聞こえてきたのはお母さんの声だった。
「うん、ついさっき起きたところ」
「具合大丈夫?」
「もう平気」
「それなら良かった…。食事摂れそうなら冷蔵庫に朝食のサラダとオムレツ入ってるから食べて?」
「ありがとう…」
「あと、昼食はカレーを作ってあるから颯己くんと一緒に食べてね」
えっ…?
返ってきた思わぬ言葉に、私は慌てて部屋のドアを開けた。
「お母さん、お昼いないの?」
「もうすぐ親戚の結婚式だから、色々と買い物しなくちゃいけなくて」
そう言えば、数日前の晩ご飯の時にそんな話をしていたような気が…。
買い物に出かけるのって今日だったのか。
「それじゃあ、お父さんが車で待ってるから、そろそろ行くわね」
「行ってらっしゃい…」
足早に出ていくお母さんを見送った後、部屋に鍵をかけた。
どうしよう…。
家の中、私と颯己だけになっちゃった…。