アイツの溺愛には敵わない

少し落ち着いた鼓動が再び活発に音を刻み始める。


“ふたりきり”だって考えただけでこんな状態なのに、一緒にお昼ご飯なんて食べられるわけないよ…。


時間ずらして食べようか…?


でも、お昼になった時に私がアクション起こさなければ颯己が呼びに来るよね。


今はまだ、面と向かって会話が出来るような状態じゃない。


少し外の空気を吸ってこよう。


このドキドキを抑えて、冷静に話をするためにも。


ゆったりとしたグレージュのニットとデニムに着替えた私は、そっと部屋を出て玄関に移動する。


靴箱からスニーカーを出して履こうとしていると、後方からドアを開ける音がしてビクッと肩が跳ねた。


「はーちゃん、出かけるの?」


気まずそうな感じの声に頷く。


「買いたいものがあるから、ちょっとコンビニに行ってくる」


後ろを振り向くことなく早口で会話を終わらせた私は、素早く家を出た。


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