アイツの溺愛には敵わない

ビックリした……。


玄関先で一声かけてから行こうと思っていたけど、まさか颯己が部屋から出てくるなんて。


心臓、止まるかと思った。


胸元を擦りながら大きく深呼吸をした。


颯己が昼食を終える頃に帰宅するとなると、今から2時間ぐらいはどこかで時間を潰さないと。


そうだ、あそこに行こう。


行き先を決めた私は、マンションを出てとりあえずコンビニへ。


飲み物だけ買って、秋晴れの空の下を歩き出す。


やって来たのは、家から15分ぐらいのところにある緑地公園内の展望台。


公園の奥に位置してるとは言え、今日は天気がいいからここも人が多いな…。


展望台の手すりに少し体を預けて、眼下に広がる景色を見つめた。


昔は颯己やクラスの友達と一緒に、よく遊びに来ていたっけ…。


懐かしい。


そう言えば……


過保護に世話を焼く幼なじみをやめようって決めたのも…


アイツとなるべく関わらないようにしていこうと決めたのも…


この場所だったな…。


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