アイツの溺愛には敵わない
『付き合ってもいないのに、いつも颯己くんと一緒にいるわけ?どういう神経してんの?』
『颯己は幼なじみで、家族みたいな存在なので…』
『うわ、うざっ…。幼なじみっていう立場を利用して、颯己くんにべったり付きまとって、彼女になろうとしてるだけじゃん。マジで最低』
『違います。私は別に彼女になりたいわけじゃないですから』
『そういう言い訳もウザイ。颯己くんはみんなのものなんだから、アンタみたいな抜けがけ女がいると不快極まりないんだよ!』
本当のことを言っても聞き入れることなく、高圧的な口調で言葉をぶつけてくる佐々野さん。
取り巻きの女の子たちからは冷たい視線をずっと向けられている状態で息が詰まるような重苦しい雰囲気。
あの時。
それ以上、何も言わなければ良かったのかもしれない。
あるいは、“すみません”って謝る方が良かったのかもしれない。
でも、佐々野さんの態度や言葉に対して不満や苛立ちを募らせていた私には…
そんな選択肢は思い浮かばなかった。