アイツの溺愛には敵わない

『佐々野さんだって、同じようなことしてるじゃないですか』


『は?』


『委員会の時間、他の人が発言している時も作業の時も構わずに話しかけてくるから困るって颯己が言ってました』


颯己は佐々野さんと同じ美化委員会だったんだけど…


いつも隣の席に座り、どんな状況でも話しかけてきて、委員長に注意されても聞く耳持たずだったらしい。


颯己も注意したらしいけど全く改善されなくて、委員会があった日の帰り道では不機嫌そうに愚痴をこぼしていた。


『それから、休日にマンションの前で颯己が出てくるのを待ってる時があるっていうのも聞きました』


颯己がコンビニに行くために出かけようとしたら、マンションの出入口で佐々野さんと鉢合わせしたことが何度かあったらしい。


本人は偶然を装おっていたみたいけど、いつも同じような時間帯だから、待ち伏せしてるんだろうと颯己が言っていた。


『颯己が迷惑がっているのに、やめて欲しいって言ったのに、同じ行動を繰り返すなんて、その方がよっぽど不快な行為だと思います』


火に油を注ぐとは、まさにこのことだなと思う。


でも、颯己が困ってるのを知っていたから、何も言わずにはいられなかったんだ。


< 125 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop