アイツの溺愛には敵わない
『今後、俺たちに……特に映結に何かしたら絶対に許さないから』
威圧感のある低い声と怒りを秘めた冷たい眼光。
背筋が凍りつくような感覚を味わったのは、この時が初めてだ。
そんな颯己を見て、佐々野さんたちは“怖い”“ヤバい”と小声で話しながら逃げるように空き教室を出ていった。
『……っ…』
私たちだけになった途端、顔を歪めた颯己。
その視線を辿ると右手首が赤く腫れ上がっていた。
『ケガしてるじゃない!』
『このぐらい大したことないよ』
『そんなわけないでしょ、こんなに腫れてるんだから。病院に…』
『大丈夫だって。きっと捻挫だろうし、湿布とか貼っておけば痛みも治まるよ』
『自分で勝手に判断するのは危険だよ!もしかしたら骨折してる可能性だってあるわけだし。ちゃんと診てもらわなくちゃ』
大げさだよと苦笑いする颯己を説得しながら帰宅。
その後、颯己は近くの病院に行った。
診断結果は捻挫。
骨折ではなかったけれど、治るまでは2週間ぐらいかかるということで、テーピングでしっかりと固定する事態になった。