アイツの溺愛には敵わない
「そんな格好で冷たい風にあたってたら風邪ひくよ」
振り向くと、いつもと変わらない穏やかな笑顔の颯己が立っていた。
「季節相応の服装だと思うけど」
「今日は秋晴れだけど風が強くて、例年よりも気温が少し低い一日みたいだよ。羽織りものがあった方が良いって天気予報で言ってた」
「ふ、ふーん……」
そう言えば、展望台に来るまで風が強めに吹いてたっけ。
でも、黙々と歩いていたから肌寒さは感じなかったけど。
「どうして、ここに…?」
「帰りが遅かったから心配で探してた。コンビニ寄ったけど姿が見当たらなくて、じゃあ…ここかなって」
「なんで私が展望台に居るって分かったの?」
「この場所、はーちゃんのお気に入りだから。楽しいことがあった時も、落ち込んだり凹んだりで辛いことがあった時も、よく来てたでしょ」
小学生の時も中学生の時も、颯己と一緒に来ることが多かったからな…。
心当たりとして、すぐ候補に上がったってことか。
よく分かってくれてるんだな、私のこと。