アイツの溺愛には敵わない
「ここに居る理由は、昨日の告白?」
悲しげで気まずそうな颯己に頷く。
家に帰ってからと思っていたけど、引き延ばすと言いにくくなりそうだし、言ってしまおう。
「私、颯己の気持ちには応えられない。ごめんなさい」
深く頭を下げたまま、反応が返ってくるのを待つ。
沈黙の時間がやけに長く感じた。
「そっか、分かった」
噛み締めるように言う颯己。
すんなりと話が終わって良かった。
ホッとしたような切ないような、複雑な気持ちを抱いていた時。
「……なんてね。俺があっさり引き下がるとでも思った?」
その言葉に素早く頭を上げると、颯己は私と同じ目線になるように背を屈めた。
「俺を諦めさせたいなら、ちゃんと納得できる理由を説明して」
優しい口調だけど、眼差しは真剣で。
曖昧な答えで切り抜けるのは無理だと悟った。
颯己にとってあの出来事は、ケガをした嫌な思い出だろうから、あまり口にはしたくなかったけど…
やむを得ないか。