アイツの溺愛には敵わない
「私と一緒に居たら、また颯己が危ない目にあうと思うから。あの時みたいにケガさせちゃうかもしれない」
「それって一年前のこと?」
「……うん」
「でも、あれは…はーちゃんの胸ぐら掴んだ挙げ句、突き飛ばした佐々野が悪いと思うんだけど」
返ってきた言葉に、すかさず首を横に振った。
「違う、私のせい」
「えっ?」
「私が佐々野さんを怒らせるようなこと言ったからなんだ」
「何を言ったの?」
話した内容をありのまま伝えると、颯己は目を伏せて“なるほど”と呟いた。
捻挫の原因を作ったのが私だと知って、嫌気がさしたよね、きっと。
「こんな最低な幼なじみよりも、素敵な女の子はたくさんいるよ。だから、颯己には他の女の子と付き合って、幸せになって……」
話を遮るように颯己は私の唇を指で摘まんだ。
「それが俺を振る理由なら、諦めるのは絶対に無理だから」
「………」
「俺のために怒ってくれたはーちゃんに何の非があるの?悪いのは正論言われて勝手にキレて手を出した佐々野じゃん」
ゆっくりと唇から指が離れる。
喋る自由を取り戻した私は、再び口を開いた。