アイツの溺愛には敵わない

「あの状況で煽るようなこと言う私も良くなかったと思うし」


「だけど、はーちゃんは佐々野の怒りのボルテージを上げようと思って意図的に怒ったわけじゃないでしょ?」


「うん…」


「あの女の迷惑行為に困ってた俺を放っておけなくて、我慢できずに怒ってくれたんだよね」


「それは、そうだけど……」


「だったら、それは優しさ故の感情であって煽りではないでしょ」


颯己は硬い表情を緩めると、温かい眼差しを私に向けた。


「俺、あの時のケガがはーちゃんのせいだなんて思ったことは一度もないし、むしろケガしたのが俺で本当に良かったと思ってる」


「えっ?」


「大切な女の子がケガすることの方が俺にとっては辛いから」


そんな風に思ってたの…?


驚きと共に目頭が熱くなる。


「はーちゃん、もう自分自身を責めないで。俺から離れようとしないで。俺の幸せは、はーちゃんが居ないと成り立たない」


颯己は私の手を取って、包み込むように優しく握った。


「映結、俺と付き合ってください」


一瞬にして滲んだ視界。


涙が頬をつたった。

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