アイツの溺愛には敵わない
小物ショップを堪能した後、駅前で綾芽ちゃんと別れて電車に乗り込む。
席替えの時に周りの視線をずっと気にしていたからか、 少し疲労感が…。
今日はさっさと課題を終わらせて、早めに寝よう…。
最寄り駅に着くと、足早にマンションへ。
家のドアを開けるとカレーのいい匂いが鼻をくすぐった。
「ただいま」
「おかえり、映結」
リビングから顔を覗かせるお母さんに笑顔を向けた。
「お母さん、今日は早いんだね」
「午後は有休もらったのよ。颯己くんが来る前に色々と準備をしておこうと思って」
「そうなんだ…」
今日の晩ご飯、颯己が来るのか…。
キッチンへと戻っていくお母さんに抑揚のない声で返事をした。
一人暮らし状態の颯己を心配して、お母さんが時どき開催する晩ご飯会。
最近は、お母さんも仕事が忙しかったから久しぶりだな。
でも、晩ご飯会だからといって、早く帰るために仕事を休んだことなんて一度もなかったのに…。
少し不思議に思いながらローファーを脱いで靴箱にしまっていた時だった。
「おかえり、はーちゃん」