アイツの溺愛には敵わない
いつものごとく熟睡。
しかも、こういう眠り方している時は起こすのに苦戦を強いられることが多いんだよな…。
「颯己、起きて」
ベッドの傍にしゃがんで、落ち着いたトーンで話しかける。
布団越しに体をゆっくりと揺さぶった。
今までは布団を無理やり引き剥がしたり、体を叩いたり、乱暴に起こしていたけれど…
それは颯己に嫌われるための行動だったわけで。
もうそんなことをする必要もなくなったから、出来るだけ優しく起こしたいんだよね。
「朝だよ、颯己」
うーん、反応ナシ。
この程度のやり方だと颯己には通用しないか。
気は進まないけど、前みたいに手荒な感じで起こさないと目を覚まさないかも…。
顎に手を当てて考えていた時だった。
「ひゃっ…!」
突然、布団の端から出てきた手に右手首を掴まれたかと思うと…
強い力で引っ張られて、あっという間に布団の中へと引きずりこまれてしまった。