アイツの溺愛には敵わない

「荒々しく起こされるのも悪くなかったけど、優しく起こしてもらう方がやっぱり嬉しいな」


薄暗い空間。


颯己の顔が視界いっぱいに写りこむ。


ビックリして離れようとしたけれど、後頭部を引き寄せられて唇を塞がれた。


「おはよ、はーちゃん」


予想外の行動に動揺してしまった私は慌てて体を起こす。


布団を勢いよく捲ると、嬉しそうに目をほそめた颯己がこちらを見つめていた。


「颯己、起きてたの!?」


「というより、殆ど眠れなかった。だって今日からはーちゃんと登校したり学校でも気兼ねなく喋れるんだなと思ったら、楽しみ過ぎて」


なによ、その理由。


小学生の男の子みたいな可愛さを感じてしまったんですが。


「はーちゃんの顔、林檎みたいに真っ赤」


「当たり前でしょ!まさか、きっ…キスなんてされると思ってなかったし」


「いいじゃん。おはようのキス、はーちゃんの彼氏になったらやってみたかったんだよね」


ご機嫌って感じの満面の笑み浮かべちゃってるよ…。


こっちは、不意打ち攻撃のせいで心臓にダメージくらってるっていうのに。


顔に風を送ろうと片方の手で仰いでいると、颯己の手が私の胸元に伸びてきた。


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