アイツの溺愛には敵わない
えっ…?
颯己、もう来てるの?
背後から聞こえてきた声に驚いて、肩がピクリと上がった。
いつもは晩ご飯の準備が出来た段階で、私が颯己のスマホに連絡。
その通知を見た颯己が家に来るっていう流れなのに。
こちらに近付いてくる足音。
振り向いた私は…
「きゃあああっっ!!」
今まで出したことのないような悲鳴を上げてしまった。
「ビックリした…。はーちゃん、どうしたの?」
「ちょ、ちょっと!!なんで服を着てないのよっ!」
背後に立っていたのは、上半身裸でタオルを首にかけている颯己。
私は慌ててスクールバッグで顔を覆って視界を遮った。
「お風呂上がりだから。それに下はジャージ履いてるじゃん」
「そういう問題じゃないの!とにかく早く服着てよ!」
“ビックリした”はこっちのセリフなんですけど!
っていうか、お風呂上がりって何!?
なんで颯己が私の家でお風呂なんか入ってるわけ?
暫く玄関のところで混乱していると、頭上からスクールバッグをヒョイと取り上げられた。