アイツの溺愛には敵わない
のんびりと散歩するようなペースで学校までやって来た私たち。
生徒たちの視線を感じながら廊下を進んで教室へ。
中に入ると、どよめきと共にみんなが一斉にこちらに顔を向けた。
まだクラスの半数ぐらいの人しか登校して来ていないけれど……
たくさんの人から同時に見られるという状況が初めてで、どうしたらいいのか分からない。
視線の圧に萎縮して俯くと、颯己が私の肩を抱いた。
「映結、ここで立ってると出入りする人たちの邪魔になるから席に行こう?」
「あっ、う…うん」
その瞬間。
クラスの女の子たちから“キャッ”と小さな悲鳴があがった。
「待って、ヤバい。真浦くんってば紳士的でカッコよすぎじゃない!?」
「私もあんな風に優しくされたい~!」
チラリと女の子たちを見てみると、みんな興奮気味にはしゃいでいて。
冷ややかな視線や重苦しい雰囲気を覚悟していた私は、少しホッとしてしまった。