アイツの溺愛には敵わない
「こんな風に、はーちゃんと一緒に昼休みを過ごせる日をずっと心待ちにしてたから嬉しい」
「小学生の時も中学生の時も同じクラスで給食を食べてたでしょ」
「班が一緒だった時はね。どのみち、二人だけで食べる機会なんてなかったじゃん」
「確かにそうだけど……って、そんなに前から心待ちにしてたの!?」
「うん。学校にいる時もはーちゃんを独り占めしたいって、いつも思ってたから」
私の手を覆うように颯己が手を重ねる。
颯己に触れられてる範囲が増えて、私の顔は瞬く間に熱くなった。
誰にも見られていないとはいえ、この体勢は照れくさいし、ドキドキが半端ない。
お昼ご飯を食べる雰囲気じゃないよ…。
どうしていいか分からず、ガチガチに固まっていると、不意に肩から頭の重みが消えた。
「こうしていると、ご飯食べ損ねちゃいそうだから、一旦中断しよっか」
「う、うん」
重ねられていた手もゆっくりと離れていく。
“一旦”っていうのが引っ掛かるけど、とりあえず昼食抜きにはならなくて良かった。
私は胸を撫で下ろしながら、お弁当を広げた。