アイツの溺愛には敵わない
「言っておくけど、はーちゃんの気持ちを完璧に読み取るような特殊能力なんて持ち合わせてないから」
「本当に?」
「表情や仕草で“こんなこと考えてるんじゃないかな”って何となく察するだけ。はーちゃんとの付き合いが長いからこそ、分かるのかもね」
そう言えば、お母さんとお父さんも言葉を交わさずに意思疎通している時があるなぁ。
あれも颯己と同じような感覚なのかもしれない。
「それでね、話を戻すけど該当しそうな人に俺が連絡をとっていく中で、投稿者が見つかったから削除のお願いをした」
「だから日曜日の夕方には投稿が消えてたんだ……」
「うん。俺のつまらない嫉妬のせいであんな事態になった挙げ句、はーちゃんに不安な気持ちを抱かせて、本当にごめん」
「私の方こそ、何も力になれなくてごめん」
「はーちゃんが悪いわけじゃないでしょ」
「でも……」
同じ屋根の下で生活しているのに。
あの画像が晒され続けることのないよう、颯己が奔走してくれていたことに、全く気付けないなんて。
今まで私は颯己の何を見て過ごしてきたんだろう。
こんなんで、笑顔や幸せを感じてもらえるような彼女になれるのかな…?
俯いたその時、颯己に優しく抱き寄せられた。