アイツの溺愛には敵わない
「はーちゃん、また自分のこと責めてるでしょ?」
「だって小さい頃からずっと傍で見てきたはずなのに、颯己の気持ちを見逃してばかりだから。特別に想ってくれていたことだって全然気付かなかったし」
「はーちゃんにとって俺は家族みたいな存在で、恋愛対象に入ってなかったんだから無理もないよ」
「そうかもしれないけど……」
胸板に埋めていた顔を上げると、颯己と視線が重なった。
「はーちゃんは俺の気持ちを見逃してばかりじゃなかったよ。落ち込んでいた時や元気がない時はいつだって励ましてくれたじゃん」
「それは表情や言動に出ていたから」
「あと、一緒に遊びたいとか買い物に出かけたいと思っている時、はーちゃんから誘ってくれることが多かった」
言われてみれば確かに、颯己の方から誘いの言葉をかけてもらったことは、あまりないかもしれない。
学校帰りや休日。
ふと思い立った時に、自分から誘うことが殆どだった。
でもそれは私の意志であって、颯己の気持ちを察したわけじゃないんだよね。
「それから、もうひとつ」
颯己は私の頬に手を添えると嬉しそうに微笑んだ。