アイツの溺愛には敵わない
「ほら、これでいい?」
目の前には黒色の長袖Tシャツを着た颯己がいて、満足げに笑みを浮かべている。
私の反応を見て楽しんでる…。
プイッと顔を背けた私は、自分の部屋ではなくキッチンへと向かった。
「お母さん!どうして颯己がお風呂に入ってるの!?」
「だってほら、今日から颯己くんもこの家で一緒に暮らすから…」
「えっ…!?」
颯己と一緒に暮らす…?
「何それ、どういうこと…?」
頭の中が無数の疑問符で埋め尽くされる。
時が止まったかのように固まっていると、お母さんが少し焦った表情を浮かべながら人差し指で頬を掻いた。
「ご、ごめんね…。お母さん、映結に伝えたつもりでいたんだけど、言い忘れてたのね」
まさかの伝達漏れ…。
お母さんの言い忘れは、今に始まったことじゃないけど…
今回の件は事前に知っておきたかったな…。
両手を合わせて謝るお母さんに苦笑いを返した。