アイツの溺愛には敵わない

「俺が心細い時、いつだって傍に居てくれた」


「えっ…」


「ほら、俺が体調悪くて寝込んでる時や、一人で留守番している時。必ず顔を見に来てくれたし、帰ってもいいよって言った後もずっと居てくれたじゃん」


「それはなんだか放っておけなくて。世話焼き癖が発動してたというか……」


「俺、本当はいつも心の中で“はーちゃんが帰ると寂しい”とか“もっと一緒に居て欲しい”って思ってたんだよ」


「そうなの?」


「うん。だから凄く嬉しかった」


あ…。


そう言えば、颯己が私に帰宅を促す時。


表情や声は普通だったんだけど、何となく寂しげな雰囲気を纏っていたような気がする。


……そっか。


私も少しは颯己の本音を感じ取れていたのかもしれない。


安堵して笑みをこぼすと、額にキスが落とされた。


「やっぱり、悩んでる顔よりも笑顔が似合うね」


「きゅ、急にどうしたの?」


「はーちゃんは今のままでいいよ。変わる必要なんてないから」


その言葉で、今朝のある場面が頭の中に浮かんだ。



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