アイツの溺愛には敵わない

「それで、一緒に住まなきゃいけない理由って何?」


お母さんから話を聞こうとしたタイミングで、颯己がキッチンにやって来た。


「俺の家、全面的にリフォームすることになったから、その期間中は家に住めなくなるんだよね。だから、はーちゃん家にお世話になるってわけ」


「期間中って、どれくらい?」


「3ヶ月くらいかな。多少、前後する可能性はあるらしいけど」


ということは、年末ぐらいまで一緒に住むことになるのか…。


長い…。


「颯己くんには巽(たつみ)の部屋を使ってもらうから。巽からもOKを貰ってるし」


巽というのは私のお兄ちゃん。


この春から大学生になり、他県で一人暮らしをしている。


お兄ちゃん、颯己のこと…本当の弟みたいに可愛がってたからな。


部屋の使用も快諾したに違いない。


「そういうわけだから颯己くんと仲良くね、映結!」


「今日からよろしくね、はーちゃん」


「……うん」


ニッコリと微笑む二人に気のない返事をして、自分の部屋に戻った。



< 17 / 255 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop