アイツの溺愛には敵わない
「それで、一緒に住まなきゃいけない理由って何?」
お母さんから話を聞こうとしたタイミングで、颯己がキッチンにやって来た。
「俺の家、全面的にリフォームすることになったから、その期間中は家に住めなくなるんだよね。だから、はーちゃん家にお世話になるってわけ」
「期間中って、どれくらい?」
「3ヶ月くらいかな。多少、前後する可能性はあるらしいけど」
ということは、年末ぐらいまで一緒に住むことになるのか…。
長い…。
「颯己くんには巽(たつみ)の部屋を使ってもらうから。巽からもOKを貰ってるし」
巽というのは私のお兄ちゃん。
この春から大学生になり、他県で一人暮らしをしている。
お兄ちゃん、颯己のこと…本当の弟みたいに可愛がってたからな。
部屋の使用も快諾したに違いない。
「そういうわけだから颯己くんと仲良くね、映結!」
「今日からよろしくね、はーちゃん」
「……うん」
ニッコリと微笑む二人に気のない返事をして、自分の部屋に戻った。