アイツの溺愛には敵わない

学校では前後の席。


家では一緒に生活。


まさか、こんなことになるなんて…。


机に向かって顔を突っ伏しながらため息を溢した。


同居のことも学校の人たちには絶対に知られないようにしないと。


また一つ、秘密事項が増えてしまった。


「はーちゃん?」


今、颯己の声が聞こえたような…


「おーい、はーちゃん」


幻聴じゃない…!


勢いよく顔を上げて振り向くと、部屋のドアの傍に颯己が立っていた。


「ちょっと!勝手にドアを開けて入って来ないでよ!」


「勝手に開けるも何も、ドアが半開き状態だったよ?それでも一応ノックはしたし、一言断ってから入ったけどね」


そっか…。


考え事していたから気づかなかっただけか。


颯己は何の断りもなくズカズカと部屋に入ってくるような無神経なヤツじゃないもんね。


「ごめん、怒ったりして。それで、どうしたの?」


「はーちゃんのスクバ、玄関に置きっぱなしだったから持ってきたよ」


颯己は肩に掛けていたバッグをラグマットの上に置いた。


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