アイツの溺愛には敵わない

「うん。だ、大丈夫……」


肩で呼吸をしながら、小さな声で言葉を返す。


そっか。


キスを受け止めるのに精一杯で、呼吸が上手く出来てなかったんだ。


だから、酸素を求めて無意識のうちに颯己の服を握っちゃったのかな……。


「ごめん。ちょっとペースが早すぎたよね」


「今みたいなキス初めてだから、なんか食べられちゃいそうな感覚でビックリした」


まだ唇に残る感触。


思い出すだけで体の熱がぶり返す。


「でも、嫌じゃなかったよ」


甘い夢の中をドキドキしながら彷徨っているような不思議な感じだった。


この時間が続けばいいのに…と思ってしまうほど。


「はーちゃん、今のはヤバい」


「えっ?」


「俺の服を掴んだまま、上目遣いでそんなことを言われたら“もっと”って、誘ってるようにしか聞こえない」


「さ、誘うって………ひゃっ」


急に目の前の景色が変わって天井が映る。


ソファーに押し倒されたんだと気付くのに、それほど時間はかからなかった。


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