アイツの溺愛には敵わない
「なんとかギリギリのところで抑えていたんだけど、ブレーキが利かなくなりそう」
私をジッと見つめたまま、颯己の顔がゆっくりと近づいてくる。
お互いの鼻先が触れそうなほどの距離になった時。
「……っ…!?」
テーブルに置いてあった私のスマホが鳴り始める。
私も颯己も肩をビクッとさせながら、スマホに視線を向けた。
「あっ、電話だ」
「鳴り続けてるし、出た方が良さそうだよ」
私の手を引いて優しく体を起こしてくれた颯己。
首の後ろに手をあてて気恥ずかしそうにしている姿に、私も顔が熱くなる。
ソワソワと落ち着かない動作で電話に出た。
「もしもし?」
『映結、おはよう。何かトラブルとかは無かった?』
「う、うん。今のところ大丈夫だよ」
『そっか、良かった!今日ね、思ってたよりも早めに帰れそうなの。多分、15時過ぎには家に着くと思う』
「了解。気をつけて帰って来てね」
会話を済ませて電話を切った私は、人差し指で頬を軽く掻きながら颯己を見た。