アイツの溺愛には敵わない
9*大好きなアイツに贈るプレゼント
この部分は、このまま編んで……。
ここまで来たら交差させて、と。
よし、キリがいいから一旦休憩しよう。
編みかけのセーターを机に置いた私は、卓上カレンダーを手にとった。
1ヶ月後の12月10日は颯己の誕生日。
当日は手作り料理を振る舞う予定だけど、それとは別にサプライズで手編みのセーターを贈ろうという計画なのだ。
良い感じのペースで進められてるし、今のところ順調。
ただ一つ気がかりなのは……
「はーちゃん、ちょっと部屋に入ってもいい?」
コンコンというドアのノック音の後に聞こえてきた颯己の声。
私は慌てて編みかけのセーターを机の一番下の引き出しにしまった。
「うん、いいよ」
何事もなかったように返事をすると、颯己が中に入って来た。
「急にごめん。英語の問題集を貸して欲しくて。学校に置いてきちゃったから課題が出来ないんだ」
「あっ、そう言えば課題あったね」
「はーちゃんもまだ未済?」
「うん、颯己に言われて気付いた。でも後でやるから先に使っていいよ」
問題集を手渡すと、颯己は少し間を置いてから“ありがとう”とお礼を言って部屋を出て行った。