アイツの溺愛には敵わない
私、変なこと言った…?
颯己だって私のこと、家族みたいに思ってるんじゃないの?
すぐに元通りの穏やかな表情になったものの、心に引っ掛かりが残る。
モヤモヤしながら、バッグからお弁当箱を取り出した。
「そうだ、颯己に言わなくちゃと思ってたことがあったんだ」
「なに?」
「今後、学校では“どうしても”っていう時以外は私に話し掛けてこないで。席替えの時、颯己から話し掛けてきたことで女の子たちがざわついたんだから」
「あんなの、挨拶みたいなもんじゃん」
「颯己にとっては普通でも、周りの女の子たちにとっては特別なことなの!」
普段から、他の女の子たちにも話し掛けてるんだったら、いちいち騒がれたりしない。
颯己が常に女の子たちに対して無愛想だからこそ、生じる事態なんだ。
「はーちゃん、一方的なお願いばっかりだね。俺は、そんなこと望んでないのに」
「だって、私たちが幼なじみだとか同居してるだなんてバレたら大変なことになるよ?颯己ファンの女の子たちはショック受けるだろうし、周りの人から冷やかしだってあるかもしれないし」
何より、また颯己がケガする可能性だってあるんだから…。