アイツの溺愛には敵わない
「そういう配慮とか気遣いなんて要らないんだけどね」
颯己は苦笑いしたかと思うと、私の背中に手を回して胸の中に引き寄せた。
「ちょっと、いきなり何なの!?」
「んー、対価みたいなものかな」
「何それ…」
「はーちゃんのお願いを大人しく聞いてあげてるんだから、たまにはご褒美もらったってバチは当たらないでしょ」
これって、ご褒美になるの?
よく分からないけど、颯己が今後も学校で他人のフリしてくれるなら、しばらくこのままでいよう。
そう言えば、小学生の時…こんな風に颯己に抱きしめられたことがあったっけ。
仲良しだった女の子が遠くに引っ越すことになって…
近所だったから、引っ越しの日に颯己と一緒に見送りに行ったんだけど…
帰り道で私は泣いてしまった。
その時、颯己が抱きしめて慰めてくれたんだよね。
懐かしい…。
でも、あの頃と比べると体つきがだいぶ変わったな…颯己。
胸板、こんなに厚いんだ。
腕も逞しい。
男の子っていうよりも男の人って感じだ。