アイツの溺愛には敵わない
「やっぱり、終わるまで美容院で待っていれば良かった」
「えっ?」
「だって、はーちゃんの新しい髪型、誰よりも先に見たかったから」
視線を逸らして、少し口を尖らせる颯己。
こんな風に子どもっぽく拗ねた表情をするのって珍しいかも。
可愛いな。
微笑ましく思いながら、颯己の手を包み込むように握った。
「一番最初にお披露目とはいかなかったけど、私は颯己の言葉や反応が誰よりも嬉しかったよ」
素直な気持ちを伝える。
颯己は私に視線を戻すと、恥ずかしそうに苦笑した。
「……俺って単純」
「な、何が?」
「吉田に対する嫉妬でイラついてたのに、はーちゃんの言葉を聞いたら、そんな気持ちも直ぐに消えた」
次の瞬間、ギュッと抱き締められる。
耳たぶに颯己の吐息がかかった。
「好きだよ、はーちゃん」
「急にどうしたの!?」
「言いたくなったから言った」
「公共の場所では控える約束を……」
「はーちゃんへの感情を抑えるのは難しいんだよ。本能のままに動くのが最善」
完全に開き直ってる。
それなら……