アイツの溺愛には敵わない
「あっ、そうだ!この前、颯己が話してた推理ドラマのDVD、家に帰って一緒に観ようよ」
一刻も早く帰宅する気になるような話題を振るに限る。
私の思惑は見透かされていそうだけど、さすがに提案を拒否することは無いはず。
面白そうなドラマだから、近いうちに観たいと思ってたのは本音だし。
「それいいね。ここで通行人の男たちに、はーちゃんをジロジロと見られるのも嫌だから」
ん?
予想とは少し違う反応だけど、まあいっか。
颯己の腕の中から解放された私。
ベンチから立ち上がると、すぐに手を握られた。
「はーちゃんとのドラマ鑑賞、楽しみ」
今にも鼻歌が聞こえてきそうなぐらい、嬉しそうな颯己。
そんな彼の横顔に笑みが零れた。
さっきの綾芽ちゃんとの会話で、こだわるのは止めようと思ったけど……
頑張ってみようかな。
誕生日のサプライズキス。
颯己は、いつも言葉や行動で“好き”を伝えてくれるけど、対する私は受け身の方が圧倒的に多い。
だから、少しずつ変わっていきたい。
私からも、心に占める大好きの気持ちを颯己にいっぱい伝えていきたいから。