アイツの溺愛には敵わない

「でも、このレターセットを今もはーちゃんが持ってるとは思わなかった」


「えっ?」


「あの時、遠くに住んでいる親戚の子と文通するのに使うって言ってたから」


言われてみれば、そんな発言をした記憶が…。


「そのつもりだったんだけど、文通には他のレターセットを使ったんだ。颯己からの贈り物だから手元に残しておきたいと思って」


「そっか……」


颯己は、表情に嬉しさを滲ませながら封筒を開ける。


そして中に入っていた便箋を手に取ると、すぐに読み始めた。


颯己へのたくさんの“ありがとう”を綴った手紙。


言葉だと照れくさくて伝えきれなかった気持ちも、文字にすると素直に書けた。


一緒に居る時間が多いが故にお互い手紙を書くことなんて一度もなかった私たち。


だからこそ、こんな風に伝えるのは新鮮でいいなと思ったんだ。


「……ヤバい、嬉しすぎる」


暫く時間が過ぎた後、颯己が呟くように発した言葉。


声が少し震えていた。



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