アイツの溺愛には敵わない
「大丈夫。はーちゃんが俺を想ってくれているのは、いつも表情や行動でちゃんと伝わってきてるから。でも……」
顔を上げると、頬が少し赤く染まった颯己と視線が絡む。
「今みたいに、はーちゃんの声で“好き”を聞けるのはやっぱり嬉しい」
浮かべた微笑みは幸せそうで。
「最高の誕生日だよ」
その直後に降ってきたキスは、とびきり優しくて甘かった。
颯己の喜ぶ顔が見たくて。
笑顔に溢れた誕生日にしたくて。
密かに準備を進めてきた。
だから“最高の誕生日”って言ってもらえたのが本当に嬉しい。
「はーちゃん、もう一回言って?」
「……好き」
「もう一回」
「…………大好き」
「顔、真っ赤だね」
「颯己も赤くなってるよ」
「そうだろうね。ずっと欲しかった言葉を聞けた嬉しさで舞い上がってるから」
はにかんだ颯己は、自分のおでこを私のおでこにピタリとくっ付けた。
「ありがとう、はーちゃん」
柔らかく弾んだ声が心の奥まで響いて、幸せな感情一色に染まる。
付き合ってから初めて迎えた颯己の誕生日は、夜遅くまでずっとずっと笑顔が絶えなかった。