アイツの溺愛には敵わない
「はーちゃん、意外に静かだね。文句言いながらアタフタするかと思ってたんだけど」
「小学生の頃を思い出して、ちょっと懐かしく感じてたから」
「もしかして、はーちゃんが仲良くしてた子が引っ越した時?」
「うん」
「あー、そういうことね…」
「それに、これで颯己が私のお願いを聞いてくれるんだったら、ちゃんと要求に応えておこうと思って」
顔を見上げると、程なくして背中に回されていた手が離れる。
颯己は何故か口元を手で隠した。
「えっ、もういいの…?」
「その言葉、煽ってるようにしか聞こえないんだけど」
「は?」
「突然、上目遣いもするし。はーちゃんって心の中に小悪魔飼ってる?」
「訳分からないこと言ってるんだったら、部屋から出てってよ」
颯己の膝をペシッと叩く。
今の私のどこに悪魔的な要素があったっていうのよ。
口を少し尖らせると、颯己は苦笑した。