アイツの溺愛には敵わない

「確かに、翌日に引っ越しの挨拶に家族で来てくれていたけど、そこにはーちゃんはいなかった」


「えっ?」


「風邪ひいて熱を出したって、当時はーちゃんのお母さんが言ってたよ。引っ越しでバタバタしてたから疲れが出たんじゃないかって」


私が熱を?


そう言われると確かに……。


忘れていた記憶が少しずつ蘇る。


引っ越して来た日は元気だったけど、翌朝になったら体調を崩してしまって。


それから数日寝込んでたんだ。


前々から、どうして私とお母さんの二人だけで挨拶しに行ったのか不思議に思っていたんだよね。


原因は間違えた日付で記憶していた私にあったのか。


「今まで颯己と初めて会ったのは17日だとばかり思ってた。ずっと勘違いしていてごめんね」


「だいぶ前のことだし、熱でダウンしていたんだから記憶が曖昧になっても無理ないよ」


「そうだけど……」


「俺、クリスマスイブをはーちゃんと過ごせるのが本当に嬉しいんだ。一生大事にしたいと思える人に出会えた特別な日だから」


温かい眼差しに見つめられて、熱く波打つ鼓動が体を駆け巡った。


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