アイツの溺愛には敵わない
振り返ってみると、昔から颯己はクリスマスイブを“特別な日”って表現していた。
確かに街の雰囲気も普段とは違うし、家ではホームパーティーを開催していたから、私はその言葉を違和感なく聞いていた。
でも颯己はずっと……
クリスマスイブを私と初めて会った日として大切に過ごしていたんだ。
目頭が熱くなる。
視界が少しずつ滲みはじめた時だった。
「もうひとつ、はーちゃんに渡したいものがあるんだ」
「えっ」
颯己は手のひらの上に私の左手を優しくのせる。
そして、薬指に銀色の指輪をはめた。
「颯己、これ……」
「俺の奥さんは、はーちゃんしか考えられないから」
今、サラリと凄いことを言われたような気が……。
驚いて固まっていると、颯己は両手で私の左手を包み込むように握った。
「映結、好きだよ。これからもずっと、二人で幸せな時間を紡いでいこう」
その言葉はまるでプロポーズのようで。
嬉しさのあまり、溢れた涙が頬をつたった。