アイツの溺愛には敵わない
朝は最悪な始まりだったものの、その後の時間の流れはわりと早くて…
あっという間に放課後を迎えた。
結局、一日中ムスッとしていた颯己。
終礼が終わると、すぐに帰ってしまった。
「映結ちゃん、帰ろう?」
可愛い笑顔と共に私の席にやって来た綾芽ちゃん。
私も頬を緩めて頷くと一緒に学校を出た。
「綾芽ちゃん、今日はヘアサロンに寄って行くの?」
「うん!」
綾芽ちゃんのお母さんは駅の近くでヘアサロンを経営していて、少し年の離れたお姉さんもそのお店にスタイリストとして勤務している。
雑誌に掲載されるぐらい人気のあるヘアサロンで、私も高校生になってからはそのお店でお世話になっている。
綾芽ちゃんも将来は美容師になりたいと言っていて、放課後になるとお店に行って掃除などのお手伝いをしながら、少しずつ勉強をしているようだ。
今から具体的な夢を持って頑張っている綾芽ちゃんは、凄いなと尊敬してしまう。
私は何となく高校生活を送ってるだけ。
将来のこと、徐々に考えていかなきゃいけないよね。
颯己は将来のこと、考えたりしているんだろうか…?