アイツの溺愛には敵わない
「それじゃあ映結ちゃん、また明日」
「じゃあね」
綾芽ちゃんと別れて電車で最寄り駅まで帰って来た私。
改札を出ると、家ではなく近所のスーパーに向かって歩きだした。
今日はお母さんもお父さんも帰りが少し遅くなるので、私が代わりに晩ご飯を作るからだ。
メニュー、何にしよう…。
前に親子丼が好評だったから、もう一度作ろうかな。
味噌汁とサラダも作って定食みたいな感じにしよう。
スーパーで材料を買い揃えた私はマンションへ帰って来た。
颯己、何してるだろう。
リビングでテレビ見てたりして…。
いや、機嫌悪かったからお兄ちゃんの部屋に籠ってるかもしれない。
その方が会話しなくていいから、ありがたいけど。
鍵を開けて中に入る。
テレビの音は聞こえないし、やっぱり部屋に…
そう思った時。
「はーちゃん、おかえり~」
キッチンから出て来たのは黒いエプロンをつけた颯己。
予想外の光景を目の当たりにした私は、その場に買い物袋をドサッと落としてしまった。