アイツの溺愛には敵わない

「ちょっと、何してるの!?」


「見てのとおり、料理中」


颯己は目を細めて笑いながらエプロンの肩紐を指で摘まんで小さく揺らす。


「俺ひとりだと心許ないから、はーちゃんも手伝って?」


「……」


私は無言で買い物袋を拾い上げると、足早に自分の部屋に入ってドアをバタンッと勢いよく閉めた。


なんなの、アイツ。


学校ではあんなに機嫌悪かったくせに、すっかり機嫌治ってるじゃん。


私が帰って来るまでに何か良いことでもあったとか?


訳が分からない。


はぁ…とため息をついた。


手伝うように言われたけど、手伝いたくないな…。


というか、そもそも手伝う必要はない。


だって、颯己は私よりも料理が得意なんだから。


心許ないなんて嘘に決まってる。


でも、颯己にだけ任せて私が部屋に籠っているっていうのもな…。


買った食材も冷蔵庫に入れなきゃいけないし。


仕方ない。


気が重いけど、着替えてキッチンに行くか。


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