アイツの溺愛には敵わない
触らせるなとか言ってるくせに、颯己は私に触ってるじゃない。
今日だって、昨日だって。
いや、列挙したらキリがない。
言葉と行動が矛盾してる。
でも、颯己がそう言うんだったら距離を空けたい私としては都合がいい。
「だったら、颯己も今後は私に触れないでよね」
「それは無理かな」
「ちょっと!さっきと話が…」
眉間にシワを寄せると、颯己はニヤリと口角を上げた。
「はーちゃんにとって、俺は家族も同然なんでしょ?」
「そ、それは…」
「中学の時なんて、弟みたいって言ってたよね?」
「うん…」
「俺がはーちゃんに触れるのは、家族としてのスキンシップみたいなものだから例外だよ」
どういう理論なのよ…。
颯己を睨んでみるけれど、動じることなく涼しい顔だ。
「納得いかないみたいだね」
「当たり前でしょ」
例外なんて、ありえない。
不満を募らせていると、颯己は意地悪っぽく笑みを浮かべた。