アイツの溺愛には敵わない
小学生の時、朝は苦手ながらも目覚まし時計で何とか起きているって話を本人がしてたから、てっきり今もそうなんだと思ってた。
颯己のお母さんも海外に行く前、特に何も言ってなかったし。
高校生になった途端、寝起きが悪くなったとか…?
よく分からないけど、前みたいに自分で起きて欲しい。
毛布の端を掴んだ私は、颯己の体から引き剥がすように勢いよく引っ張った。
「颯己、起きて!これ以上寝てると遅刻するよ!」
大きな声を出しながら、パンパンと肩を叩く。
「んー……」
柔らかい黒髪の隙間から覗く瞼がゆっくりと開いた。
「はーちゃん、おはよ」
私を見るなり口元を緩めて微笑む颯己。
気だるげな声ではあるけれど、顔色は悪くない。
今日も体調面は問題なさそうだ。
大きな欠伸と共に、モゾモゾと上体を起こした颯己はボンヤリと窓の外を眺めている。
目覚めても暫くは動けないらしい。
私は剥ぎ取った毛布を畳んでベッドの隅に置くと、デスクの上にお弁当入りのバッグを置いた。